狩猟録『緊迫の心理戦 -後編-』
斜面の鹿と対峙!
右往左往する荒ハン
緊張と焦燥の心理戦、ついに完結!
ちなみに前編を3行に要約すると
・鹿の尻しか見えないので移動
・移動したらもっと見えなくなってまた移動
・再度移動して確認すると…
こうなります
前編の長文はなんだったんだというぐらいコンパクトにまとまりましたねw
前回の記事はこちら↓
ものすごくお時間のあるときにでも見てもらえると嬉しいです
arakezurihunting-of-the-soul.hatenablog.jp
↓ではでは続き↓
…
……
………
まるっこい尻のシルエットは消え
なにやら長細いシルエットが見える
ん?
これは?
ややパニクるがすぐに正体が判明
先程の尻が引っ込み
今度は首だけが出ているのである
木の幹から首が生えているようなシルエット
確かに首にヒットすれば即倒は間違いない
しかし面積が小さい
いかんせん小さい…
つまり狙撃の難度が跳ね上がる方程式
距離だけでもハードモードなのに
いきなりベリーハードモードに突入
また場所を変えるか?
いや、これ以上動き回るのはさすがにリスキー
やはりここから撃つしかない!
その決心と同時にゆっくりと
まるで太極拳でもしているかのような速度で腰を下ろし安定性を高める
スコープは最大倍率
十字のマークを鹿にのせる
呼吸、鼓動、筋肉の収縮
体のあらゆる生体反応が狙いを阻む
まるで「撃つな」というように
その抵抗をかいくぐり引き金に指をかける
緊張…
焦燥…
興奮…
指先がゆっくりと死のアーチを描く
「 ターーーンッッッ!!!!‼ 」
響く轟音
一瞬だけ自身の時が止まる
「あたったか?」
走り出す鹿
「え、、外した?」
勝手に命中からの即倒という
なんとも都合のいい未来を想像していた荒ハン
これっぽっちも外したイメージができておらず
次弾装填からの構えにもたつく
その間にシカは藪の中に飛び込み逃走
結局追撃は放てず
逃げていった藪の方向をしばし眺めていた
わずかに涙を浮かべながら…………
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拝啓
見ておられますでしょうか?
この無様な失中を
武者震いあらため小鹿のような震えで銃を携える私を
百発百中の極意とは何なのでしょうか?
いつか到達する日がくるのでしょうか?
今はただ穴があったら入りたいです
敬具
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思わず歴戦の狙撃手に心の手紙を送ってしまいました
それにしても狙って引き金を引く
ただそれだけの動作がまさかこれ程までに重圧なものだとは
そして外すととてつもない虚無感に襲われることになるとは
似たような状況でも難なく的中させるハンターはたくさんいるはず
そんなハンター達との間には茫漠なスキル差があることを再認識をするに至った荒ハンであった
~Fin~